サンプルシナリオ1「復讐の鎖」

作:涼宮隼十

シナリオ情報

必要目安時間

2~3時間

今回予告

とある学校で起こる不可解な事件
その謎を解き明かすのは、生者と死者の二人組

鎖の欠片を集め、すべての謎を明らかにしたとき
真実の底に映るのは、一体誰の欲望か

人霊共鳴RPGキズナイト「復讐の鎖」

絆の糸で、鎖を断ち切れ!

ハンドアウト(共通)

君たちは、【絆糸】で結ばれた【双魂】だ。そして【生者PC】は、中学3年生の「桃山梓」と近所付き合いの盛んな知り合いである。 ある日、桃山梓は【生者PC】に対し、「最近私のクラスの様子が変なんです」と相談を持ちかけた。 君たちは、その話に【鎖事件】の気配を感じ、詳しく調査を始めることにした。

NPC情報「桃山 梓(ももやま あずさ)」

【生者PC】の知り合いである中学3年生の女の子。
黒髪ロングとパーカーがトレードマーク。
礼儀正しい喋り方が、おとなしそうな雰囲気によく似合っている。
人見知りなところはあるが懐きやすく、【生者PC】を実の兄または姉のように慕っている。
持病があり、つい最近まで長期入院していたが、退院した。

プリプレイ

セッションの当日に参加するメンバーが揃ったら、まずはシナリオを遊ぶための準備を行ないます。詳細はセッションの流れを参照してください。

キズナイトの解説

キズナイトを初めて遊ぶ参加者がいる場合、GMは最初にキズナイトがどのようなゲームなのかを解説しましょう。以下のような大まかな内容で構いません。

GM:人霊共鳴RPGキズナイトとは、この世に生きている【生者】と、幽霊である【死者】が、【絆糸】と呼ばれる【魂】の糸で互いの【魂】を結びつけ、一蓮托生の二人組【双魂】となって、互いを助け合ったり、悪霊や霊能力者などに立ち向かったりする物語を体感するTRPGです。

シナリオ情報の提示

GMはPLにシナリオ情報を公開してください。シナリオ情報は必要目安時間、今回予告、ハンドアウト、NPC情報の4つで構成されています。
必要目安時間は、これから遊ぶシナリオがだいたいどれくらいの時間で終わるかを示したものです。
今回予告は、これから遊ぶシナリオがどのような雰囲気の内容であるかを伝えるものです。
ハンドアウトは、シナリオに参加するPCの立場や背景などが指定されています。
NPC情報は、そのシナリオに登場するNPCがどのような性格で、どのような外見なのかなど設定を記述したものです。

PCの準備

開示された今回予告とハンドアウトを踏まえて、PLは、PCを準備することになります。GMは各PLに1枚ずつキャラクターシートを配ってください。PCの作成方法にはクイックスタートコンストラクションの2種類があります。PLがキズナイトを初めて遊ぶ場合には、クイックスタートをおすすめします。

自己紹介

PCの準備が終わったら、GMとPLの自己紹介を行ないます。PLは自分自身とPCの自己紹介をそれぞれ行なってください。
PCの自己紹介では、PCの名前、生死、クラスなどキャラクターシートの項目をそれぞれ読み上げるとよいでしょう。

魂点表の準備

最後に、GMは、魂点表を用意し、【生者】のPCを表すコマを3のマスに、【死者】のPCを表すコマを11のマスに配置します。これをPCの初期配置と呼びます。
【魂点表】の準備が終わったら、プリプレイは終了です。メインプレイへと移ってください。

メインプレイ

日常パート

日常パートでは、PCたちが普段どのような日常生活を送っているかを演出します。詳しい演出の内容については、セッションの流れを参照してください。

【日常演出決定表】
1.【生者】の趣味・好きな活動に【死者】が付き合っている
2.【死者】の趣味・好きな活動に【生者】が付き合っている
3.【生者】の行きたいところにふたりで出かけている
4.【死者】の行きたいところにふたりで出かけている
5.【生者】の仕事・学業に【死者】が付き合っている
6.【双魂】として【鎖使い】と戦っている。

導入パート

導入パートでは、PCたちがどのようにして事件に関わることになるのか、またはその事件の発端を演出します。
今回のシナリオの場合、【生者PC】の知り合いである「桃山梓」と昔よく遊んだ公園で偶然出会い、話を聞く場面を演出していきます。

描写1

君たちは、とある日の夕方、どこかへ出かけた帰り道を歩いていた。
※このとき、PCたちがどこに出かけていたのか、どんな会話をしているのかをPCと共に相談して演出するとよいでしょう。

その帰り道の道中、公園を通りがかった。
その公園は、【生者PC】が知り合いの「桃山梓」と昔よく遊んだ公園だった。
そしてちょうど、制服姿の梓が公園のベンチに座り、缶のココアを飲んでいた。
梓は【生者PC】に気づくと、話しかけてくる。

「あれ、【生者PC】さん…?」
「私のこと、覚えていますか?」
「えへへ……お久しぶりです。お元気にしてましたか?」
「それならよかったです。あの。急にこんなこと言うのもよくないかもしれないんですけど……」
「ひとつ、ご相談に乗ってくれませんか?」
「ちょっと、変な話になっちゃうんですけど……【生者PC】さんなら、何かわかるかもって……なんとなく思って」

彼女は、【生者PC】を自分が座っているベンチの隣に座るよう誘う。
【生者PC】が座ると、彼女はゆっくりと話しはじめる。

「私が、ちょっと前まで入院してたことって知ってますか?」
「この前久々に退院して、学校に行ったんですけど……」
「私のクラス、なんだか変な感じだったんです」
「変っていうか……違和感がすごくあって……」
「その、私のクラスに、赤西蓮くんっていう人がいるんですけど」
「蓮くん、前はすごい人気者で、ほんとに優等生って感じで……先生からも、ほかの生徒の皆からも、一目置かれてるような人だったんです」
「でも、最近、様子がおかしくて……」
「蓮くんがっていうより、周りの皆が変なんです。今まで蓮くんと仲良くしてた子が、蓮くんのこと無視してたり、嫌がらせみたいなことするようになってて……」
「それに、先生まで変なんです。それを見て見ぬ振りするならまだしも、先生も蓮くんに酷いこと言ったりしてて……」
「私、自分が入院してる間に、きっと何かあったんだろうって思ったんですけど、よくわからなくて……」
「ただの喧嘩とか、いじめとか、そんな感じじゃなくて、すごく嫌な予感がしたんです。なんだか……すごく怖くて……」
「こんな話してすみません。でも、【生者PC】さんにお話ししただけで、ちょっとだけ楽になりました」
「お話聞いてくれてありがとうございます。じゃあ、私そろそろ帰りますね」

そういって、彼女は帰宅した。
残された君たちは、梓の違和感を信じ、探査を行なうことにした。
※ここで、彼女の話を整理し、調査を始めるような流れをPCたちに演出してもらうと良いでしょう。

探査パート

探査パートでは、PCたちが桃山梓のクラスを取り巻く事件について探査を行なっていきます。探査パートの進め方については、こちらを参照してください。

初期情報項目

情報項目1「北中学校3年1組」
手がかり:桃山梓の在籍するクラス。赤西蓮という優等生も在籍している。梓によれば、最近クラスの皆に違和感があるらしく、何人かの生徒や先生が赤西蓮のことを無視したり嫌がらせをしたりするようになっている。
真実:赤西蓮に対し嫌がらせをするようになった人間は、もともと赤西蓮と仲の良い者がほとんどであり、突然何のきっかけもなく、態度が急変したそうだ。また、そのような人間が、3年1組で徐々に増えていっており、現在クラスの半分が嫌がらせをするようになっている。増加の傾向を見るに、あと数日もすれば、梓を含めたクラス全員が「いじめ」を行なうようになるだろう。

情報項目2「赤西 蓮(あかにし れん)」
手がかり:梓と同じクラスに在籍する男の子。黒髪で高身長の美少年。スポーツや勉強などなんでも卒なくこなし、先生やほかの生徒に対する態度も優しく、明るい優等生とのこと。
真実:梓の入院が始まった頃、同じクラスの「青井奈月」という男子生徒に対し、赤西蓮が集団を率い、いじめを行なっていたという事実が判明した。いじめの内容は陰湿な嫌がらせが多く、表立って問題視されるような行動は少なかったため、ほとんどこのいじめに気付いた生徒や先生はいないという状態だった。しかし、青井奈月はこのいじめが3か月続いた頃に投身自殺した。いじめに関する調査も行なわれたが、何も表沙汰になることはなく、遺書も見つからなかった。
また、赤西蓮はもともと青井奈月と幼馴染であり、仲が良かったという事実もある。このいじめの原因について詳しく知る者は本人を除いてはいないだろう。
新たに情報項目として、情報項目3「青井奈月」を開示する。
この情報を開示した後、すぐに以下の「挿入描写1」が発生する。

挿入描写1

君たちが探査を進めていると、北中学校のすぐ近くの路地裏で、数人の中学生に囲まれている赤西蓮を発見する。
彼は、囲まれた中学生に、殴る、蹴るなどの暴行を受けていた。
※PCは、彼らが【憑鎖】に繋がれている【囚魂】であることがわかります。
「なんでッ……急にどうしたんだよお前ら……! 俺らこの前まであんなに仲良かっただろッ……!」
「みんなどうしちまったんだよ……ッ……クソッ…!」

もし、PCが赤西蓮を助けると、彼に話を聞くことができる。

「あんた誰だ……? なんで俺を助けてくれた……?」
「俺のこと知ってるのか……?」
「なぁ、助けてくれ。俺の周りの皆、おかしくなっちまってるんだ」
「あいつが……奈月が死んでからだ……きっと、あいつの呪いなんだよ……」

PCからいじめの理由について聞かれると、彼は以下のように答える。

「それが……こんなこと言っても信じてもらえないかもしれないが……自分でもよくわからないんだ……」
「俺、あいつのこと嫌いじゃなかったのに……急に、“あいつをみんなでいじめなきゃ”って思って……」
「まるで、誰かに操られてたみたいだった……」
「こんなこと言っても、信じてもらえないよな……」

追加情報項目

情報項目3「青井 奈月(あおい なつき)」
手がかり:梓と同じクラスに在籍していた男の子。眼鏡をかけた地味な男の子で、赤西蓮によるいじめを受け、1週間ほど前に自殺した。享年15歳。
真実:彼は死後、鎖使いとして覚醒し、北中学校3年1組の人間を次々と囚魂にしている。その目的は、自分をいじめた主犯人である「赤西蓮」に対する復讐であり、両親や先生を含めた赤西蓮の周りの人間を操りながら、彼を痛めつけている。また、囚魂としている人間の数も徐々に増えつつあり、今はクラス全員を囚魂にすることを狙っている。彼の次の目標は「桃山梓」であり、彼女を支配すべく、彼女のいる「公園」へと向かっている。

戦闘パート

戦闘パートでは、PCたちが桃山梓を狙う青井奈月と戦闘を行ないます。戦闘に入る前に、以下の描写を読み上げてください。最初は、PCの登場しない描写から始まり、奈月が憑鎖を放つ瞬間に登場するようにしてください。
詳しい戦闘ルールについては、こちらを参照してください。

描写1

桃山梓は、前と同じように公園でココアを飲んでいた。
学校帰りの夕方にこの公園でココアを飲むのが、彼女にとっての楽しみであるからだ。
そんな彼女のもとに、不可視の存在が、一歩一歩、近づいていく。
梓にはもちろん、その姿が見えることはなく、声も聞こえない。

「次は、キミの番だ。桃山梓……」
「キミも確か、赤西クンと仲良さそうに喋ってたことあったよねェ……」
「キミもボクの兵隊になるんだ。アイツをもっともっと苦しませるために……!」
「そしたらボクはもっと強くなる……まだ足りないんだ、クラス全員を支配して、学校全体を支配して、街全体を支配して、この世界すべてを支配して、アイツだけを仲間外れにしてやらないと、気が済まないんだよ!」

奈月はそう叫び、梓に向かって憑鎖を放つ。
君たちは、その憑鎖を弾くように間に入り込む。

「誰だ……ボクの邪魔をするのはッ!」
「なんだオマエら…! ボクの邪魔をするなら、オマエらも兵隊にしてやるッ!」

そういって、両手から憑鎖を地面に向けて放つと、地面に印が浮かび、そこから北中学校の学生服を着た生徒が出現します。

PCたちが演出を終えたら、戦闘に入ってください。
【鎖使い:青井奈月】、【学生の囚魂】×2体、との戦闘となります。

ボスデータ

鎖使い:青井奈月
生死:死者 初期配置:5
【行動決定表】
1 呪鎖縛双 ―ジュサバクソウ―
生者のPCを下に2マス、死者のPCを上に2マス移動させる。
2 此岸拐魂 ―シガンカイコン―
生者のPCを下に3マス移動させる。 
3 彼岸拐魂 ―ヒガンカイコン―
死者のPCを上に3マス移動させる。 
4 剥路乱造 ―ハクジランゾウ―
2D6を3回振り、出た出目と同じ数字のマスをそれぞれ【特異点:剥し場】に変更する。
5 骸囚招覧 ―ガイシュウショウラン―
2D6を1回振り、出た出目と同じ数字のマスに【学生の囚魂】を1体配置する。
怨鎖不滅 ―エンサフメツ―
自分が生者なら上に4マス、死者なら下に4マス移動させる。

モブデータ

学生の囚魂
生死:生者 初期配置:2
【行動決定表】
1 現世引 ―ゲンセイン―
生者のPCを下に1マス移動させる。
2 幽世引 ―ユウセイン―
死者のPCを上に1マス移動させる。
3 脅倍幻 ―キョウバイゲン―
自分は、次の手番で2回【行動決定表】を振り、それぞれ効果を処理する。
4 剥路造 ―ハクジゾウ―
2d6を振り、出た出目と同じ数字のマスを【特異点:剥し場】に変更する。
5 留鎖怨 ―リュウサエン―
ボスが生者なら上に1マス、死者なら下に1マス移動させる。
6 行動なし

終幕パート

終幕パートでは、物語の結末や後日談を演出します。

描写1

戦闘に勝利すると、青井奈月は、以下の台詞を吐き、青い炎に包まれながら【彼岸】へと還っていきます。

「まだだ……まだボクはこんなところで終わらない……必ず還ってきて、ボクを裏切った赤西クンに絶望を与えてやるんだ……ッ」
「そして……ボクの邪魔をしたキミたちも許さない……!」
「覚えておけよ……必ずこっちに戻ってきて、次こそはキミたちを倒す……」

そして、青井奈月が【彼岸】に還ると、彼がさっきまで存在していた場所に、【憑鎖】の欠片が落ちてきます。
PCがその【憑鎖】の欠片を調べると、以下の描写2が発生します。
もし調べない場合、描写3へと移ってください。

描写2 -青井奈月の記憶-

ボクは、自らの身を投げ、自らの生涯を終えたはずだった。
それなのに、ぼんやりとした意識の中、誰かの声が聞こえてきたんだ。

「ねぇ、私たちと同じ、【鎖使い】になろうよ!」

視界の中に飛び込んできたのは、煤けた赤い着物に身を包んだ黒髪の少女。
彼女の無邪気であどけない声が、ボクの意識に直接語り掛けてくる。

「キミ、ずっと前からあの人間の友達に嫉妬してたんでしょ?」
「自分に無いもの全部持ってて、誰からも好かれてて……」
「仲良い友達だったのに、相手の全部を否定したいくらい憎んでたんでしょ?」
「だから、私、キミのその欲望を増やしてあげたの」
「やり方は内緒だよ。でも、そのおかげで、キミの欲望、とっても素敵なことになってる」
「さぁ、その欲望を解放してよ! 私が育てたその憎しみを、鎖に変えて、キミの想いを目いっぱいぶつけてきて!」

そして、ふと気がついたとき、ボクは、まだこの世界にいたんだ。
頭の中は、自分のやるべきこと……彼に復讐することでいっぱいだった。
さぁ、どう痛めつけようか。
キミの苦しむ顔をボクに見せてくれよ。赤西クン。

描写3

青井奈月が彼岸に還ったことで、囚魂となった学生たちは解放されます。
そして、君たちはとある日の夕方、どこかへ出かけた帰り道の途中、公園を通りがかると、 制服姿でココアを飲む梓と会話することになります。

「あ、【生者PC】さん!」
「この前は、話聞いてくださってありがとうございました」
「あれから、違和感があったクラスも、すっかり元に戻ったんです」
「ついこの間まで、すごく暗い雰囲気で、嫌な空気が漂ってたけど、今はすごく良い雰囲気になったんですよ」
「もしかしたら、【生者PC】さんのおかげだったりして……」
「でも、本当にお話しして、よかったです!」
「また、たまには私と遊んでくださいね?」

場面を演出し終わったら、キリの良いところでメインプレイを終了し、アフタープレイへと移ってください。

アフタープレイ

アフタープレイでは、参加者全員でセッションを振り返り、終了するための処理を行ないます。詳しくは、こちらを参照してください。
アフレープレイを終えたらセッションは終了です。
お疲れさまでした!