世界観設定

このページでは、キズナイトで遊ぶ上で舞台となる世界観について解説します。

キズナイトの世界

この物語の舞台となる世界は、基本的にあなたの暮らす世界とあまり違いはありません。しかし、いくつかの点において密かに、そして大きく異なっています。それは、生者の世界である【此岸(しがん)】と死者の世界である【彼岸(ひがん)】、本来隔てられた二つの世界が交差してしまった世界だということです。そこには、人間を乗っ取ろうとする悪霊や、幽霊の力を我が物とする霊能力者などのような、二つの世界を脅かす存在がいます。

そして、PCたちは此岸の存在である【生者】と、彼岸の存在である【死者】の二人組として、この世界に存在することになります。さまざまなきっかけを経て魂同士が繋がれた二人が、運命共同体【双魂(そうこん)】として共に誰かを助けたり、自分たちを脅かす存在【鎖使い】に立ち向かったりする――それが、【人霊共鳴RPG キズナイト】です。

【魂】と【此岸】と【彼岸】

【キズナイト】の世界には明確に【魂】が存在しています。【魂】は生物に宿る生命や精神の源であり、肉体が滅びようとも残るものです。そして肉体が滅びた、つまり死んだ者は【魂】のみの存在となり、【死者】として【彼岸】――あの世へ逝くわけです。

ただし、一般的に【生者】は【魂】や【彼岸】の存在を知覚することができません。そのため、ほとんどの一般人は死ぬまで【魂】や【彼岸】のことを知らずに暮らします。一方で、【死者】は【魂】や【彼岸】、そして【此岸】の存在を知覚することができますが、肉体を持たないため、通常【此岸】への干渉はできません。

【魂】

生命や精神の源である【魂】とそれが変化した【絆糸】は一般人には見ることも触ることもできません。しかし、【死者】や【双魂】、【鎖使い】はそれらを知覚することができます。【魂】は基本的に決まった形を持ちませんが、ほとんどは青い炎のような見た目をしており、【絆糸】も同じく青い色をしています。

また、その炎の様子は持ち主の状態によって左右されます。たとえば、瀕死状態にある生者の炎は小さく見えたり、強力な【双魂】や【鎖使い】の炎は勢いが強く見えたりします。【死者】となったばかりの【魂】は非常に小さく弱弱しいものですが、持ち主がその状態に慣れていくことでだんだんと大きくなり、かつて生きていた頃と同じような大きさに戻っていきます。さらに、死を経験したことがきっかけとなり、【魂】が生きていたときの大きさを超えることもあります。

【死者】の【魂】

【死者】は一般的な【生者】と違い自分や周りの【魂】を知覚することができます。そのため、死んでからある程度経過すれば、多少なりとも自分の【魂】の扱い方を覚えることになります。

たとえば、【死者】は【魂】の見た目を【変容】させ、生きていた頃の自分の見た目を再現することができます。ただし、この【変容】には制限があり、ほとんどの【死者】は生前の自分の容姿の再現しかできません。しかし、【双魂】や【鎖使い】であればある程度自由に姿を変えることができます。そのため、自分以外の誰かや、悪魔・妖怪などの空想上の存在に姿を変えている【死者】も存在します。

また、【死者】は念ずることによって、発声を行なわなくても自分の考えを【念話】として周囲に伝えることが可能です。【念話】は、念じる強さによって伝わる範囲が変化します。つまり、強く念じればそれだけ広い範囲に伝わり、弱く念じれば狭い範囲に伝わることになります。そのため、【念話】を使い、遠く離れた相手にのみ自分の考えを伝えるということはできません。しかし、【双魂】であれば【絆糸】を介し、ふたつの【魂】の間のみで自由に【念話】によるやり取りを行なえます。ちなみに、【鎖使い】と【囚魂】も【憑鎖】によって同じことができますが、こちらはすべて【鎖使い】の意志によります。また力を持つ【魂】のごく一部には、そうした制約なくある程度自由に【念話】を使いこなす者も存在します。

基本的に、【死者】は【変容】した自分の姿や【念話】を一般的な【生者】に知覚させたり、記録媒体に残したりすることはできません。しかし、【双魂】や【鎖使い】などの力を持った【死者】であれば不可能ではありません。

人間以外の【魂】

【魂】を持つのは人間だけではありません。犬や猫、魚や鳥などの動物も【魂】を持ちます。彼らが【死者】となれば、人間と同じように【彼岸】へと向かいます。

一方で、無機物や植物には【魂】が宿っていません。植物の場合、【魂】に近い生命エネルギーを持っていますが、それは【魂】の形を保っていません。【魂】を持つことができるのは、自分の意志を持ち、自立して動く生命のみなのです。

また、動物の【死者】も、人間の【死者】と同じように【念話】を使用することができます。つまり、元が人間であっても動物であっても、【死者】や【双魂】、そして【鎖使い】たちは【念話】によって意思疎通が可能なのです。

【彼岸】

【彼岸】は【死者】の【魂】の向かう場所、「あの世」です。ここでは、【彼岸】についてより詳しく説明します。

【此岸】の裏側にあると言われる【彼岸】は、どこかおどろおどろしい空気が漂い、何もない真っ白な空間が果てしなく広がっている空虚な世界です。そこには無数の【死者】の【魂】がさまよい、新しい【生者】の【魂】に生まれ変わるか、消滅するかを待っています。また、たまに空間に穴が開き、そこから【此岸】の情景が見えることがあります。

【死者】の【魂】は数年から数十年ほどで生まれ変わるか消滅するものがほとんどです。しかし、【魂】が【彼岸】にいる期間には個人差があります。たとえば、【彼岸】にたどり着いた直後すぐに生まれ変わる【魂】や、江戸時代に死んで【彼岸】にたどり着いたものの、ずっと生まれ変わることも消滅することもなく【彼岸】をさまよい続ける【魂】もいます。

人間以外の動物も死んだら【彼岸】に行きますが、彼らは死んですぐに生まれ変わるか消滅するため、【彼岸】にいる期間は短いです。そのため、【彼岸】に存在する【魂】はほとんど人間のものです。ただし、自我を保ったまま長期間【彼岸】に存在し、力に目覚める動物もごくわずかですが存在します。

また、ごくまれに【死者】となった後も【彼岸】に行けず、ただの【魂】として【此岸】に留まってしまった【死者】がいます。基本的に【此岸】に干渉できない彼らは、多くは自分たちを知覚できる力を持つ者や同じ様な境遇の仲間を探してただ【此岸】をさまよっています。【此岸】に深い心残りが残っていた【死者】が心残りを解消できたら【彼岸】に行けたなどの事例もありますが、彼らのような存在がなぜ生まれるのかの理由は完全には明らかになっていません。

【双魂】

【此岸】の存在である【生者】と【彼岸】の存在である【死者】が交わることは本来起こり得ません。しかし、稀にそんな二つの存在がさまざまな理由により「縁」を持ち、互いの世界の境を越えることがあります。このとき、互いの【魂】の一部が細い「糸」のような形状に変化して、【生者】と【死者】を結び付けます。この【魂】の「糸」のことを、【絆糸(きずないと)】と呼びます。それは【魂】と同じく一般人には見えも触れもしませんが、確かに存在しているのです。そして、この【絆糸】によって【魂】が結ばれた【生者】と【死者】の二人組、それが【双魂】と呼ばれる存在です。

【双魂】が生まれる時

【双魂】として【生者】と【死者】の【魂】が結ばれる原因はさまざまです。たとえば、【死者】の遺品に【生者】が触れることで互いの声が届くようになる場合や、「もう一度会いたい」と互いに強く願うことによって結ばれる場合、あるいは、何の前触れもなく突然【死者】が見えるようになる場合などがあります。

しかし、上記のような状況になれば必ず【双魂】になれるという訳ではありません。【双魂】という存在が何故生まれるのかについて、この世界ではまだ明らかになっていないのです。

【双魂】の力

【双魂】となった【生者】と【死者】はそれぞれが本来持ち得ない特殊な力を行使できるようになります。一口に特殊な力と言ってもその種類は多用で、遠く離れた景色を見通す「千里眼」や、手を触れずに物を動かし操る「念動力」、霊力を体に流し込むことによる「身体強化」などがあります。

そうした力を彼らが発揮できるのは、【絆糸】によって互いの【魂】が繋がっているためです。それにより本来隔絶された世界(【生者】にとっての【彼岸】、【死者】にとっての【此岸】)と縁を持った【魂】が、自身が存在する世界とは対極にある世界の力を利用できるようになるのです。そうして行使する力や技は【結糸術(けっしじゅつ)】と呼ばれています。

また、【双魂】にとって【結糸術】は、自分たち以外の存在の【魂】に唯一直接干渉できる手段であるため、悪霊や霊能力者たちと渡り合う際必要不可欠なものです。

しかし、【絆糸】を失った時、【双魂】はその【魂】の繋がりと力を失います。これを【切離状態(せつりじょうたい)】と呼びます。【双魂】にとって【絆糸】は繋がりの証明であり、力の供給器官であり、生命線なのです。

【共鳴】

【結糸術】を使用するにあたり必要なことは、【絆糸】を通してお互いの【魂】の波長を合わせ、【共鳴】させることです。これは互いの意志や思考などを共有し、息を合わせるようなイメージです(【双魂】となった【魂】は、互いの思考を言葉を介さずに共有することが可能です)。そしてこの際、互いの【魂】と【魂】が密接であればあるほど強い【共鳴】をすることができ、より強力な【結糸術】を発動できるようになります。

しかし、二つの【魂】が密接になるということは、互いが本来いるべき世界との繋がりがそれだけ希薄となっていることを意味します。そのとき、【魂】は非常に不安定な状態になっているため、その状態を保ち続けることは難しくなっていきます。

【切離状態】

【絆糸】はそのか細い見た目に反し強靭で、そう簡単には失われません。しかし、外部より【絆糸】や【魂】に直接干渉されるなどして、互いの【魂】が引き離されてしまうと話は別です。【魂】が離れれば離れるほど【絆糸】は引っ張られ、いつしか限界に達し千切れてしまうわけです。これを【双魂】の【切離状態】と呼びます。

一度この状態になってしまうと【双魂】は無力となり、悪霊や霊能力者たちの恰好の餌食となってしまいます。再び【魂】から【絆糸】を伸ばすことは不可能ではないのですが、基本的に再び同じ相手と再び【双魂】になることは叶いません。そのため、【切離状態】は【双魂】にとってほぼ「死」に等しいのです。

【結魂】

しかし、【切離状態】となってしまった【双魂】には、【結魂(けっこん)】という復活の手段があります。 【切離状態】となってしまった【双魂】がその直後最後の力を振り絞り、【絆糸】を結び直す行為のことです。【魂】が変化した形である【絆糸】を伸ばし、 相手の【絆糸】と結び合わせることで行ないます。 この【結魂】を行なってのみ、同じ相手と【絆糸】を繋ぎ直すことができます。さらにこの【結魂】を行なうと、【絆糸】は以前より強固になり、さらなる力を手にします。

ただし、一度【結魂】を行なった上で再び【切離状態】になってしまうと、【生者】か【死者】のどちらかの絆糸には【結び目】が残ります。 そして、【結び目】が残ってしまった【魂】は、もう誰とも【双魂】となることはできません。そのため、この【結魂】は追い詰められた場合の最後の手段なのです。

【魂】の距離

【双魂】が強力な【結糸術】を発動させるためには【魂】と【魂】を密接にすることで、共鳴を強める必要があります。逆に、ふたつの【魂】の距離が離れすぎれば、【切離状態】となります。しかし、この「密接」や「距離」という言葉は、物理的な距離を指すものではありません。

【双魂】のような【此岸】と【彼岸】の境を越えた【魂】には、物理的な位置とは異なる特殊な位置の指標があるのです。これを、【魂点(こんてん)】と呼びます。

【魂点】が示すのは、【此岸】と【彼岸】から見た【魂】の位置関係です。【結糸術】に関わる【魂】の距離は、すべて【魂点】が基準となります。【双魂】は、互いの【魂】が【此岸】と【彼岸】から見てどのような位置関係にあるかを基準に互いの距離を割り出すのです。これを【共鳴距離】と呼びます。

魂を脅かす者たち

この世界において【此岸】と【彼岸】の境を越えた力を持つのは【双魂】だけではありません。この世界には【双魂】と敵対する存在、「悪霊」や「霊能力者」が存在しているのです。

【鎖使い】

【双魂】と敵対する「悪霊」や「霊能力者」は、【双魂】と同じく、もうひとつの世界の存在と自分の【魂】を結びつけることで、力を得ています。しかし、その【魂】の結びつきは、【双魂】のように対等なものではありません。

彼らが他者と【魂】を結びつける際、その【魂】の一部は糸ではなく、「鎖」のような形状に変化します。これは彼らの欲望が「鎖」の形を持って現れたものです。この鎖のことを【憑鎖(つきぐさり)】、そして【憑鎖】を操る者のことを【鎖使い】と呼びます。

【鎖使い】が放った【憑鎖】は一方的に対象の【魂】へと伸びていき、その【魂】を縛りつけてしまいます。一度捕まってしまった【魂】は鎖に支配され、自我を失ったまま操られたり、無自覚に支配者の思い通りの行動を取らされたりします。こうして、【鎖使い】に支配されてしまった魂は、【囚魂(しゅうこん)】と呼びます。【囚魂】となった【魂】を解放するためには、その鎖を断つ、つまり【切離状態】にするほかありません。

【憑鎖】の性質

【憑鎖】は、強い欲を持つ者の【魂】から生まれ、その欲求の強さに応じて伸びていきます。ただし、その存在を知覚し、まして操るということは非常に難しく、大抵は気づきもしないまま消滅していきます。しかし、たとえ無意識にでも、一度それを反対側の世界の【魂】に繋げてしまえば、その者は完全に【魂】や【鎖】を知覚することができるようになります。こうして【鎖使い】は誕生するのです。

彼らはほかの【鎖使い】から何らかの指導を受けることで覚醒した者がほとんどですが、ごくまれに自力で覚醒した者も存在します。また、【憑鎖】に一人一本の制限はないため、一人で多人数の【魂】に繋ぎ、操ることも可能です。多くの【魂】を支配すればするほど【鎖使い】は力を増し、反対側の世界の存在に限らず、【生者】が【生者】を、【死者】が【死者】を支配することも可能になります。

伸ばせる【憑鎖】の数は【鎖使い】の元々の素質によっても変化するため、【鎖使い】であれば無制限に好きなだけ【憑鎖】を操れるという訳ではありません。しかし、強大な【鎖使い】となれば一つの街に存在するすべての【魂】を支配することもできるのです。

なお、既に【絆糸】や【憑鎖】が繋がれている【魂】には、【憑鎖】を繋げることができません。しかし、一度【切離状態】にしてしまえば、【憑鎖】を繋げ支配することができます。さらに、それらの【魂】は、一般の【魂】より遙かに【鎖使い】の力を強めます。そのため、【双魂】は【鎖使い】たちによく狙われるのです。

【憑鎖】を伸ばす理由

【鎖使い】は、さまざまな理由で他者の【魂】を支配します。そのほとんどは、自分の欲望や野望のため、人間や幽霊を【憑鎖】で支配し、操ることを目的としています。たとえば、家族や恋人など特定の人物へ歪んだ執着を向ける者や、個人的な怨みを持つ相手を支配しようとする者などがいます。

しかし、人や霊を支配すること自体を目的とする【鎖使い】も存在しています。そうした【鎖使い】は数多くの【囚魂】を支配することで、自分の力をより強力にしようとしているのです。 【鎖使い】の力は【囚魂】を増やせば増やすほど強力になり、その力の限界は未だに明らかになっていません。そのため、多くの【鎖使い】たちの間では、「【鎖使い】に不可能は無く、極めれば神の領域に至れる」とまことしやかに語られています。「【死者】を生き返らせる」や「時間を巻き戻して人生をやり直す」などといった現状では不可能な望みでも、【鎖使い】としての力を極めればいつかは叶えられる、そう信じて【囚魂】を増やし続ける【鎖使い】も少なくないのです。

そうして【鎖使い】たちが起こす事件のことを、【鎖事件(くさりじけん)】と呼びます。

潜む【囚魂】

【囚魂】となってしまった人々は、基本的に【双魂】や別の【鎖使い】が見ればすぐにそれと分かります。その【魂】には、【鎖使い】が伸ばした【憑鎖】が繋がれているからです。つまり、その伸ばされた【憑鎖】をたどれば、【鎖使い】の元へ自然とたどり着けるのです。ただし、たどり着かれる前に自らその【囚魂】を【切離状態】にして追跡を出来なくさせるという手段を取る【鎖使い】もいます。

また、強力な【鎖使い】は、相手を支配する力を一時的に弱めることで【憑鎖】の存在感を極限まで薄め、【双魂】やほかの【鎖使い】に【憑鎖】を気付かれないようにすることができます。こうした力を【憑鎖の潜在化】と呼びます。

【憑鎖】が潜在化されている間、【囚魂】には自我があり、基本的には自由な行動が可能です。つまり、日常生活を送る中で、無意識の内に【鎖使い】からの命令を実行してしまうこともあるのです。ただし、【憑鎖】が潜在化している間は、自殺や殺人、また重大な犯罪など、本人が強く抵抗するような行動を実行させることはできません。

【憑鎖の潜在化】は【鎖使い】の意志でいつでも解除することが可能です。これを、【憑鎖の顕在化】と呼びます。

【潜在化】、【顕在化】の力があることで、【鎖使い】は【囚魂】を敵である【双魂】に気付かせず暗躍させることが可能です。【双魂】の長年の友人が何か月も前から【囚魂】になっていたといった事例も決して珍しくはないのです。

【鎖使い】の力

【鎖使い】の力は、他人の【魂】を支配するだけではありません。【双魂】の【結糸術】のような千里眼やポルターガイストなどの特殊な能力、そして炎や幻を操るといった超常的な力などを行使できます。どんな能力が使えるかは個人差がありますが、一般的に【双魂】よりも強力です。

さらに、多くの【魂】を支配した【鎖使い】は、時に【此岸】と【彼岸】の境を歪めるほどの力を得ます。そのような【鎖使い】は、世界を歪ませて「存在しない部屋」、「存在しない駅」などの本来有り得ない空間を作り出し、その空間ごと我が物とすることができます。こうした場のことを【閉鎖空域(へいさくういき)】と呼び、一度足を踏み入れれば、無事に抜け出すことは困難です。

【鎖使い】たちが使うこれらの力のことを、【縛鎖術(ばくさじゅつ)】と呼びます。

また、【縛鎖術】は、【鎖使い】が月の光を浴びることで強化されます。たとえば、夜には支配可能な人数が増えたり、満月の夜のみに巨大な【閉鎖空域】を出現させられたりするのです。そのため、【鎖使い】の活動が活発になるのは、夜であることが多いです。

【縛鎖術】は、【鎖使い】の意志によって【囚魂】にも発動させることが可能です。【鎖使い】の力を一部分け与える形で発動させるので支配しているすべての【囚魂】に発動させることは困難ですし、その威力は【鎖使い】本人が使用するものより数段劣ります。しかし、【双魂】やほかの【鎖使い】との戦いにおいて戦いの手数が増えることは非常に有用なため、大抵の【鎖使い】は戦いの際一部の【囚魂】を戦いの場に引きずり出します。

【鎖使い】の暴走

【囚魂】を作ることは【鎖使い】にとって力を得るために必要不可欠なことですが、決してノーリスクという訳ではありません。【鎖使い】それぞれに【囚魂】の許容量があり、それを越えてなお支配を続ける場合、歪に膨れ上がった【憑鎖】の力に【鎖使い】自身が飲まれ、暴走してしまう場合があります。暴走してしまった【鎖使い】は理性を失い、欲望のまま【囚魂】を増やし周囲に危害を加え続ける、非常に危険な存在となります。もっともこうなってしまった存在は【双魂】だけでなくほかの【鎖使い】にとっても邪魔になるため、暴走後すぐに【切離状態】にされ力を失うことが多いようです。

ちなみに、【憑鎖】の存在に気付かないまま【鎖使い】に覚醒したものの支配の許容量が非常に低く、すぐに暴走してしまう【鎖使い】もいます。そうした【鎖使い】は大抵自分が誰かを支配しているという自覚が全くなく、【切離状態】にされた後には何も覚えていないということも多いです。

【鎖事件】と社会

【双魂】や【鎖使い】そして【鎖事件】の存在については、現在一般社会には公にされていません。【双魂】たちに加え政府や警察の上層部、またごく一部の民間企業などの手によって、【鎖事件】は隠蔽されるか、全く別の事件として書き換えられることになります。これは、力を持たない一般人にとって【鎖使い】や【囚魂】を見分ける方法がなく、公表した所でただいたずらに混乱を招いてしまうためです。

また、【囚魂】になってしまった人々は、支配されていたときの記憶が曖昧になります。そのため、基本的には事件についての詳細は知らされないまま日常に帰ることになります。ただ、【囚魂】として重大な犯罪の実行をさせられた人など、完全な隠蔽が難しい者の場合、事情の説明をされた後しばらく国か【双魂】たちの保護下に置かれることになります。

【朧憑夜(おぼろづきよ)】

【双魂】たちに「悪夢」として語られる事件、それが【朧憑夜】です。
五十年ほど前のある日の夜、それは何の前触れもなく起こりました。突然、全国各地で【鎖使い】や【双魂】が同時に誕生し、【鎖事件】が大量発生したのです。その被害は大きく、当時のまだ小さかった【魂守衆】が事件をある程度処理し終わるまで十年近くかかりました。

原因は今も分かっていませんが、強力な【鎖使い】が数多くの【魂】を支配したことで【此岸】と【彼岸】の境が歪んでしまったのではないかと【双魂】たちの間では語られています。

いずれにせよこの事件をきっかけに【鎖使い】や【双魂】の数は爆発的に増加し、今も増え続けているのです。

【双魂】と【鎖事件】

【鎖事件】を起こす数多の【鎖使い】と渡り合えるのは、基本的に【双魂】だけです。ここでは、【鎖事件】に遭遇した【双魂】たちがどのように事態を解決するのかを簡単に説明します。

探る【結糸術】

基本的に【鎖事件】を起こす【鎖使い】は自分たちの手を汚さず、実際の行動は【囚魂】に行なわせることが多いです。そのため、【鎖使い】を打倒し【鎖事件】を解決するには、まず【鎖使い】が誰かを突き止め、その場所までたどり着く必要があります。

しかし、【縛鎖術】を用いて巧妙に姿をくらます【鎖使い】たちは、通常の手段で見つけ出すことがほぼ不可能です。そのため必要となるのが「千里眼」や「念写」などの【探査結糸術】です。【探査結糸術】とはその名の通り、「戦い」ではなく「探査」のための【結糸術】です。【双魂】たちはこうした【結糸術】を駆使し、【鎖使い】の手がかりを集めるのです。

【憑鎖】の欠片

【鎖使い】を探る【双魂】たちの前には、往々にして【囚魂】や【閉鎖空域】が障害として立ちはだかります。しかし、これらの障害には、【鎖使い】の痕跡である【憑鎖】のごく一部が欠片のような形で残ることがあります。当然この欠片も元は【鎖使い】の魂の一部なので実体はありませんが、【双魂】であれば知覚し手に取ることができます。そして、この欠片は【鎖使い】を探し出す大きな手掛かりとなります。

【憑鎖】は【鎖使い】の【魂】が一部変容したものです。そのため、そこには【鎖使い】の【魂】の記憶が刻まれています。そして、【憑鎖】は【鎖使い】の欲望の象徴でもあるため、そこからはその欲望の内容や動機が読み取れるのです。

つまり、【双魂】たちが【憑鎖】の欠片に触れることで、何故【鎖事件】が起きたのか、【鎖使い】が何を求めているのかといった情報を、【鎖使い】本人の記憶という形で得ることができるのです。基本的に欠片から読み取れる記憶はごく一部であり、どのような形で記憶が刻まれているかにも個人差があります。しかし、【鎖使い】の正体を見極めたり、行動パターンを読んだりするためには、【憑鎖】の欠片は何より大きな手掛かりとなるのです。

【魂】と【魂】の戦い

こうした調査を続け【鎖使い】の元に辿り着いた【双魂】は、いよいよ【鎖使い】と直接対決をすることになります。しかし、当然ながらその戦いは常識とは全く異なるものとなります。

まず、この戦いを始めると、戦っている【生者】の姿は一般人から認識できなくなります。これは戦いの場において、【生者】が【死者】に限りなく近づくためです。

そして力を持った【魂】同士の戦いは、「敵をあるべき世界に還す」ことが決着となります。【双魂】や【鎖使い】はどちらも特殊な縁によって【此岸】や【彼岸】の境を越えた存在ですが、もともと【魂】は本来あるべき世界に還ろうとする性質があります。そのため、【結糸術】や【縛鎖術】を用いて敵の【魂】や【絆糸】、【憑鎖】に直接攻撃していけば、繋がりが弱まり【魂】は自然と自身のあるべき世界へ向かっていきます。そうしていつしか限界に達し【切離状態】となるのです。基本的に【魂】は不滅であり、【生者】の肉体も【双魂】や【鎖使い】であれば自動的に霊力で守られるため、【魂】同士の戦いにおいてはこの【切離状態】のみが明確な「決着」となります。