劇場版シナリオ①「陰る勿忘草 -縛ル鎖ハ誰ガ為ニ-」

作:御十宙数  監修:涼宮隼十

シナリオ情報

必要目安時間

2~4時間

今回予告

記憶は時に人を呪う
過去は時に牙を剝く

呪いを恐れて記憶を縛り
過去を遠ざけ全てを失う

結末はもう変わらない
救いの「糸」でも下りない限り―――

人霊共鳴RPGキズナイト「陰る勿忘草 -縛ル鎖ハ誰ガ為ニ-」

絆の糸で、鎖を断ち切れ!

ハンドアウト(生者PC)

君は、【双魂】の生者だ。ある日君は友人である「霞 翔(かすみ しょう)」と共に道を歩いている際、突然【鎖使い】同士の大規模な争いに巻き込まれる。
同時に巻き込まれた霞は大怪我を負い入院することになったが、【鎖使い】たちは戦いながらその場を離れていき一旦事件は収まった。
しかしその後、【魂守衆】が情報操作をする前にその事件の痕跡や記録が忽然と消えてしまったと情報が入る。
さらに入院していたはずの霞まで姿を消し、その存在すらも周囲から忘れ去られてしまう。
君は、霞を探し出すため事件の調査に乗り出すことになる。

ハンドアウト(死者PC)

君は、【双魂】の死者だ。突然【鎖使い】同士の大規模な争いに巻き込まれた君は、その片方の【鎖使い】に見覚えがあった。
それは君がまだ【双魂】になる前、【彼岸】で出会った数少ない知り合い、「霧須 音羽(きりす おとは)」だったのだ。
その後、君に目もくれずその場を去っていった霧須は、その行方を完全にくらました。それと同じくして、その争いの痕跡は完全に消え去る。
全ての消失を霧須の仕業とみなし【魂守衆】は調査を開始するが、君はそれに違和感を覚える。 君は、霧須を探し出すため事件の調査に乗り出すことになる。

NPC情報「霞 翔(かすみ しょう)」

【生者PC】と友人である高校1年生の男子。【双魂】や【鎖使い】のことは何も知らない一般人。
茶髪を短く切っており、少し小柄な体格。性格は生真面目で友人思いだが、多少気弱な面がある。 PCたちと共に【鎖使い】たちの争いに巻き込まれ大怪我を負い病院に運ばれるが、しばらくして行方が分からなくなる。

NPC情報「霧須 音羽(きりす おとは)」

【死者PC】と知り合いであった、何年も前に若くして亡くなった男。生前の見た目を模しており、細身だが精悍な体つき。現在は【鎖使い】になっているようだ。
かつて一般の【死者】として【彼岸】で【死者PC】と共に過ごしていたが、【死者PC】が【双魂】になってからは会っていなかった。 生前は劇団員をしており、生きている誰かが自分のことを覚え、また自分が生きた記録が残っていることを誇りに思っていた。【鎖使い】になった理由は不明。

トレーラー画像

プリプレイ

セッションの当日に参加するメンバーが揃ったら、まずはシナリオを遊ぶための準備を行ないます。詳細はセッションの流れを参照してください。

キズナイトの解説

キズナイトを初めて遊ぶ参加者がいる場合、GMは最初にキズナイトがどのようなゲームなのかを解説しましょう。以下のような大まかな内容で構いません。

GM:人霊共鳴RPGキズナイトとは、この世に生きている【生者】と、幽霊である【死者】が、【絆糸】と呼ばれる【魂】の糸で互いの【魂】を結びつけ、一蓮托生の二人組【双魂】となって、互いを助け合ったり、悪霊や霊能力者などに立ち向かったりする物語を体感するTRPGです。

シナリオ情報の提示

GMはPLにシナリオ情報を公開してください。シナリオ情報は必要目安時間、今回予告、ハンドアウト、NPC情報の4つで構成されています。
必要目安時間は、これから遊ぶシナリオがだいたいどれくらいの時間で終わるかを示したものです。
今回予告は、これから遊ぶシナリオがどのような雰囲気の内容であるかを伝えるものです。
ハンドアウトは、シナリオに参加するPCの立場や背景などが指定されています。
NPC情報は、そのシナリオに登場するNPCがどのような性格で、どのような外見なのかなど設定を記述したものです。

PCの準備

開示された今回予告とハンドアウトを踏まえて、PLは、PCを準備することになります。GMは各PLに1枚ずつキャラクターシートを配ってください。PCの作成方法にはクイックスタートコンストラクションの2種類があります。PLがキズナイトを初めて遊ぶ場合には、クイックスタートをおすすめします。

自己紹介

PCの準備が終わったら、GMとPLの自己紹介を行ないます。PLは自分自身とPCの自己紹介をそれぞれ行なってください。
PCの自己紹介では、PCの名前、生死、クラスなどキャラクターシートの項目をそれぞれ読み上げるとよいでしょう。

魂点表の準備

最後に、GMは、魂点表を用意し、【生者】のPCを表すコマを3のマスに、【死者】のPCを表すコマを11のマスに配置します。これをPCの初期配置と呼びます。
【魂点表】の準備が終わったら、プリプレイは終了です。メインプレイへと移ってください。

メインプレイ

日常パート

日常パートでは、PCたちが普段どのような日常生活を送っているかを演出します。詳しい演出の内容については、セッションの流れを参照してください。

【日常演出決定表】
1.【生者】の趣味・好きな活動に【死者】が付き合っている
2.【死者】の趣味・好きな活動に【生者】が付き合っている
3.【生者】の行きたいところにふたりで出かけている
4.【死者】の行きたいところにふたりで出かけている
5.【生者】の仕事・学業に【死者】が付き合っている
6.【双魂】として【鎖使い】と戦っている。

導入パート

導入パートでは、PCたちがどのようにして事件に関わることになるのか、またはその事件の発端を演出します。

描写1 (死者PC回想) 登場:死者PCのみ

君が【双魂】になる前に、ただの【死者】だった頃、君はとくにあてもなく【彼岸】をさまよっていた。

するとそこに、君の見覚えのある【死者】がいた。
彼は「霧須 音羽」といい、君が【死者】となってから【彼岸】で出会った数少ない知り合いだった。彼は何かを熱心に見ており、君にはなかなか気づかない様子だ。
(PCが自分から話しかけようとしない場合、少し間をおいて音羽の方から話しかけてください。)

翔「おっと、【死者PC】か!悪い悪い。今【此岸】の様子が見えるから、どうにも気になってな」

そう言うと彼は、空間に大きく空いた穴を指差した。
どうやら彼は、たまたま空いた【此岸】が見える穴を熱心に覗いているようだ。

音「……前にな。ここから、オレのことを話してくれてる人が見えたんだ」
音「前にも言ったけどオレ生きてた頃は一応役者でさ、その時演劇を観に来てくれてた人だった」
音「まあ、正直そこまでいい評価じゃあなかったけど、それでもめちゃくちゃ嬉しかったよ」
音「オレは今こうして死んじゃってるけど、どんな形だって、どんな評価だってそれでもオレがいたことを覚えてくれる人はいるし、生きた証も残ってる」
音「それってなんか、すげえ幸せだなあって思うんだ。それでつい、穴が開くたびにどっかでオレのことを話しちゃいないか、オレを覚えている誰かが見えないかって探しちまう」
音「つっても、それ以来全然そんなの見つけられねえんだけどな……」

音「……わりい!つまんねえ話聞かせちまったな!気にしないでくれ!」
音「そんじゃ、またどっかで会おうや!その前にどっちか転生してるかもだけどな!」

描写2 登場:生者PC(死者PCは任意)

君は、友人である「霞 翔」といつもの日常を過ごしていた。(学校生活もしくはアルバイトなど。どのような日常かについては基本PCの希望通りにしていただいて構いません。)
そんな中、翔はふと思い出したように君に話しかける。

翔「あ、そうだそうだ!【生者PC】ってこういうの興味ある?」

そういって、翔は2枚の紙片を取り出す。見るとそれは週末に行われる演劇のチケットのようで、そこには『劇団ミオソティス -ある役者の記憶-』と書いてあった。

翔「なんか知り合いに渡されたんだよ。最近一部でめっちゃ流行ってて絶対感動するからってかなり熱心に」
翔「で、これペアチケットだからさ、僕一人で行ってもしょうがないし、【生者PC】もどうかと思って」

(内容について聞かれると)
翔「なんでも、前にその劇団に所属してた役者さんの人生を辿る、実話を交えた話なんだって」
翔「その人事故で亡くなっちゃったらしいんだけど、かつての仲間が彼の演劇にかける思いを伝えて覚えてもらおうってことで作ったらしい」
翔「でも、こうして仲間だった人にずっと覚えてもらって劇まで作ってもらえるって、なんだかいいよね。よっぽどいい人だったのかな」

(了承する場合)
翔「そっか、よかった!それじゃあまた週末に!」

「描写3」に移行する。

(断る場合)
翔「そっか、了解!急に誘っちゃってごめん!それじゃあまた!」

「描写3」を飛ばし、「描写4」に移行する。

描写3 登場:【双魂】

君たちは、霞 翔と共に「劇団ミオソティス」の劇を観に行った
劇の内容は事前に翔に聞いていたとおり、かつて劇団に所属していたメンバー「霧須 音羽」の人生を描いたものだった。

役者を夢見た青年霧須 音羽が一人で都会に出て、そこで出会った仲間と共に好きな花「ワスレナグサ」の名前を付けた「劇団ミオソティス」を結成する。
当初は全く採算がとれず、メンバー同士の諍いなどのトラブルもあった。しかし皆で協力して公演を続け、劇団は少しずつ軌道に乗り始めていく。
そんなある日、大事な公演の前日に突然の交通事故によって音羽は亡くなってしまうが、彼の思いを継いだ団員たちが公演を決行し、結果劇は大成功。
そして、劇団は今日も「自分たちの演劇が観た人の忘れられない思い出となる」という当初からの目標を掲げて活動を続ける……そういった内容だった。

そんな劇を観た帰り道、翔は【生者PC】に話しかける。

翔「……なんだかよかったね。霧須って人、本当に大切に思われてたんだ」
翔「……ただ、なんか……」
翔「……ああ、ごめん!劇の内容が悪かったとかじゃなくてさ!」
翔「……なんか、役者さんたちの雰囲気が、やけに必死だったというか……なにか、違和感があった……ような……」

そう言われてみると、PCたちも出演者たちやスタッフの様子になんともいえない違和感があったように思う。

翔「……いや、ごめんごめん!多分気のせいだと思うから!気にしないで!」

「描写4」に移行する。

描写4 登場:【双魂】

しばらく経って、君たちは翔と共に道を歩いていた。(描写3を経ている場合、その帰り道の途中になります)
そんな中、突然辺りに轟音が鳴り響き、衝撃の余波が君たちを襲った。
君たちが轟音のした方向を見ると、そこには大量の【囚魂】と、二人の【鎖使い】がいた。
君たちはどうやら、【鎖使い】が町中で大規模な争いを始めたらしいと分かる。

うち片方の【生者】である制服を来た女子高生については、PCは二人ともその顔を知っていた。【双魂】たちの間でも有名な存在である【摂理機関】の過激派の急先鋒、「途崎 茜」であった。
そして彼女と戦っている【死者】の鎖使いについて、【死者PC】は見覚えがあった。それは【彼岸】での知り合い、「霧須 音羽」だったのだ。彼の【囚魂】の中には、先ほど君たちが観た劇の出演者やスタッフらしき人物もいた。
正気を失った暴走状態に見える様子で戦う音羽を、茜は周りの被害を一切気にせず過激に攻撃を重ね追い詰めていく。音羽の【囚魂】は次から次へと解放されていき、決着は時間の問題に思えた。

茜「消えろ……【死者】は消えろぉっ!!!」

音「は、はははっは!!!見ろ!オレをもっと!!オレはここだ!オレはここにいる!!!いたんだよお!!!」
音「オレを見てくれ、オレを知ってくれ!!」
音「忘れないでくれよぉっ!!!!」

そんな中、一般人である霞 翔は何が起こっているのか全く分かっていない様子だった。

(この時、【死者】はもちろん戦っている【生者】も一般人からは認識できないため、実際に霞 翔には周囲の被害しか分かっていません。)

翔「な、なんか分からないけど、逃げよう【生者PC】!ここにいちゃ危ない!」

そうして、翔は【生者PC】の手を引いて逃げようとする。するとそこに、崩れかけた建物から巨大なガレキの破片がいくつも降ってきた。

翔「危ない!【生者PC】!」

そうして、【生者PC】をかばおうとした翔は降ってきたがれきの破片に当たり、怪我を負ってしまう。(PCが【探査結糸術】念動力を使用すると言った場合、判定に成功しても全ては庇いきれなかったと伝えてください)
君たちがそんな翔に気を取られている内に【鎖使い】たちはどこかへ消えてしまい、辺りは静まり返っていた。
しばらくすると駆け付けた【魂守衆】に君たちは保護され、翔も病院に運ばれることになる。決して軽傷ではないが命に別状はなく、しばらく入院すれば完治するとのことだった。

翔「なんかごめんな……心配かけちゃって……」
翔「……なあ、【生者PC】……あの、さ、さっきの騒ぎのとき……」
翔「……いや、何でもない、ごめん」

描写5 登場:【双魂】

事件から数日後、君たちは【魂守衆】の本部に呼び出される。そこには、リーダーである【死者】「三鷹 秋帆」と、その相方であり孫でもある【生者】「三鷹 梨乃」がいた。

秋「急に呼びつけてしまってごめんなさいね。二人とも」
秋「実は、この間君たちが巻き込まれた【鎖使い】どうしの戦いについて聞きたいことがあるの。梨乃、説明をお願い」

梨「うん。あの後、私たちはあの事件の後処理に動いていた。【鎖使い】どうしの争いなんて、世間にそのまま公表はできないもんね」
梨「解放された【囚魂】たちは全員保護し終わって、その後現場の痕跡の方を何とかしようと思ってたんだけど……」
梨「なくなっちゃったの、全部」
梨「建物に空いてたはずの大穴とかも全部なくなっちゃって。現場にいたはずの人たちも、何も覚えていないって」
梨「【摂理機関】はあまりこういうことをしないから、考えられるのは、もう一人の方」
梨「だから私たちは、霧須 音羽が途崎 茜から逃れて、そのまま自分の痕跡を全て消したんじゃないかと思ってる」
梨「もちろん、自分がそこにいた証拠を全て消して、追手から逃れるために」
梨「暴走状態だと自分の強い欲求のみに従って行動する。けれど、その欲が自分を守ることに特化していれば、そういうことも可能なはずよ」
梨「それで、この見解について【死者PC】くん(さん)に聞きたいの、どうかな?」
梨「霧須 音羽には、そういう欲があったように見えた?」

(この時点でPCが霧須 音羽の欲望と【鎖使い】の行動の違いに違和感があるかを確認してください)

梨「……うん、わかった、ありがとう。取り敢えずこちらでも再度調査をしてみる、入院中の霞 翔さんにもこれから色々……」

すると突然、三鷹梨乃の携帯が鳴りだす。

梨「はい、もしもし……うん、うん……え!?」
梨「大変!入院中の霞 翔さんが、病院から消えたって!それどころか、入院すら『してなかった』ことになってる……!」
秋「……どうやら、思っていたよりも事態はかなり深刻そうね」
秋「聞いていたとおりよ、二人とも。このままだと、何もかも手遅れになるかもしれない。協力、してくれるかしら?」
秋「多分だけれど、あなたたち二人が、事件解決の鍵よ。不甲斐ないことを言うけれど、頼んだわ」
秋「……それでも、絶対に無理はしないこと」

探査パート

探査パートでは、PCたちが事件について探査を行なっていきます。探査パートの進め方については、こちらを参照してください。

初期情報項目

情報項目1「霞 翔」
手掛かり:【生者PC】の友人。【鎖使い】同士の戦いにより怪我を負い入院するが、病院から姿を消す。
真実:霞 鄙斐?縲宣事鎖ソ縺??代〒縺ゅk縲ゅ?宣事菴ソ縺??代←縺?@縺ョ謌ヲ縺?↓蟾サ縺崎セシ縺セ繧後◆髫帙?√?千函閠?C縲代↓縺ッ閾ェ蛻??遏・繧峨↑縺?ス輔°縺瑚ヲ九∴縺ヲ縺?k縺ィ豌励′莉倥>縺溘?ゅ◎縺励※縲∬?蛻??遏・繧
得たはずの情報を読み取れない。【鎖使い】の【縛鎖術】によって情報が隠蔽されているらしい。

情報項目2「解放された【囚魂】」
手掛かり:霧須 音羽の【囚魂】だった一般人。途崎 茜との戦いによって多くが解放されるも大半が激しく負傷し、【魂守衆】によって保護された。
真実:彼らは支配されている間の記憶を殆ど覚えていなかったが、共通して「劇団ミオソティス」のチケットを何枚も持っていた。「劇団ミオソティス」の関係者は多かったが、それ以外の人物も同じくチケットを持っていたのだ。支配されている期間、彼らは周囲にチケットを配り、観劇を強く薦めていたようだ。
また解放された人数の多さから見て、霧須 音羽は途崎 茜との戦闘によって、完全に【囚魂】を失いただの【魂】に戻っている可能性がある。【死者】の【魂】が比較的多い病院に逃げたらしいとの情報も入っており、そこで霞 翔と接触したかもしれない。
新たに情報項目として、情報項目3「劇団ミオソティス」を開示する。

追加情報項目

情報項目3「劇団ミオソティス」
手掛かり:霧須 音羽の元【囚魂】たちが観劇を薦めていた劇団。チケットを見ると、現在公演期間中のようだ。
真実:霧須 音羽がかつて所属していた小さな劇団。しかし、PCたちが観た演劇の内容とは異なり、この劇団は既に解散している。
「公演」は、霧須 音羽が自分の存在を示し自分の名を遺すために計画したものだった。かつての自分の劇団の元仲間や周囲の人物を【囚魂】とし、【潜在化】状態のまま行わせていたものだったようだ。しかし、途崎 茜との争いの後には一切行われていない。「公演」の行われていた劇場は、現在【魂守衆】が調査に向っている。
情報項目1,2,3の【真実】を開示することで、新たに情報項目4「【鎖使い】による情報隠蔽」を開示する。

情報項目4「【鎖使い】による情報隠蔽」
手掛かり:事件関係者の記憶や事件の痕跡には数多くの隠蔽や改ざんがなされ、一部の情報が読み取れない。【鎖使い】の目的は何なのだろうか。
真実:今回の事件において隠蔽、改ざんされているのは、霞 翔の経歴や人間関係など、彼一人に関連する情報が殆ど。「劇団ミオソティス」など、霧須 音羽に関係する重要な情報や記憶については、殆ど手を付けられていなかった。
また、霧須 音羽が「公演」の拠点としていた劇場についても、調査に向った【魂守衆】が帰ってきたようだ。本部にいる三鷹 秋帆たちに聞きに行けば、情報が得られるだろう。
本部に情報を聞きに行くと宣言すると、すぐに以下の「挿入描写1」が発生する。

挿入描写1

君たちが【魂守衆】本部に向かうと、そこには「三鷹 秋帆」と「三鷹 梨乃」がいた。

梨「二人とも、お疲れ様。だいたい話は聞いてるよ。霧須 音羽の劇場について聞きに来たんだよね」
梨「実は、その劇場……だいぶ前に誰も使わなくなって廃墟になってたんだけど……その中には、【閉鎖空域】が存在した」
梨「それで、改めて何組かに調査に行ってもらったけど、結果は良くない」
梨「全員、無事に帰っては来るんだけど……誰も、『覚えていない』の。中で何があったか。場合によっては、なんで自分たちがここにいるのかさえ」
梨「一般人ならともかく、【双魂】の記憶は本来簡単には操れないんだけど……あの【閉鎖空域】の中は、どうやら例外みたい」
梨「でも、あの中に【鎖使い】がいるのは多分間違いない。何もかも『忘れさせてしまう』、そんな欲を持った、かなり厄介なのが」

秋「……これは、私の推測なのだけれど。今回この【閉鎖空域】の場所が発見できたのは、【鎖使い】があえてそうしたんじゃないかしら」
秋「【鎖使い】なら、人々の記憶の操作くらい簡単にやってしまう。でも相手が【双魂】となるとそうはいかない」
秋「だからこそ、分かりやすい場所に【閉鎖空域】を作って、私たちに見つけさせた。そこに誘い込んで、【双魂】にすら『忘れさせる』ために」
秋「……そしてそうだとしたら、その一番の目的は、もしかしたら……」

三鷹 秋帆はしばらく何かを考えた後、言葉を続ける。

秋「……無理はしないでほしいと、そう言ったわ。けれど……」
秋「……やはりこの事件の解決の一番の鍵は、あなたたちかもしれない」
秋「……この事件は、かなり危険なものになると思う。それでも、あなたたちは行ってくれる?」
秋「……ありがとう。それじゃあもう少し、伝えておきたいことがあるの」
秋「……きちんと、向き合ってあげて。相手が何を思っていようと、どんな風になっていようと、しっかり認識して、相手の名前を呼んであげて」
秋「『自分はあなたを見ている』と、そう伝えることは、とても大事なことだから」

【閉鎖空域】の位置情報を入手する。
PCたちが【閉鎖空域】に移動すると宣言することで、戦闘パートに移行する。

戦闘パート

戦闘パートでは、PCたちが戦闘を行ないます。戦闘に入る前に、以下の描写を読み上げてください。詳しい戦闘ルールについては、こちらを参照してください。

戦闘前描写1

君たちは、かつて「劇団ミオソティス」がよく利用していた劇場、その廃墟に来ていた。(導入パートでPCたちが観劇に来ていた場合、その時には霧須 音羽の【縛鎖術】によって現役の劇場であるように偽装させられていたことが分かります。)
建物からはどこか禍々しい空気を感じ、ここが【閉鎖空域】の入口であることを実感させる。

入口から一歩足を踏み入れると、突然君たちの視界が悪くなる。そこは建物の中であるはずなのに、黒いモヤのようなものが立ち込めた、舞台も何もない殺風景な空間となっていた。

?「……来た」

そこに力ない足取りで、1人の【鎖使い】と【囚魂】たちが現れた。【閉鎖空域】全体に漂う黒いモヤは彼らを中心に濃く取り巻いており、それが誰なのか見た目だけでは判断がつかない。
モヤの主である【鎖使い】は君たちの方に顔を向けると、ゆっくり語りだした

?「…………来ちゃった、のか……」
?「……いいや、どうせ、これなら分からないでしょ、知らなくていい、分からなくていい……」
?「……だから知らないまま、全部忘れさせてあげる。僕のことも、この【囚魂】たちのことも……」
?「……どうせ、ここで僕のことなんて、見えたりしないし、分かりっこないんだから……」

そう言うと、【鎖使い】は手を動かして漂うモヤを操作し、君たちを包みこもうとする。
【鎖使い】の動きを止めなければ、君たちは何もかも「忘れて」しまうだろう。

ここで、PCが誰の名も呼ばない場合、以下の「挿入描写2」が発生する。

PCが「霧須 音羽」の名前を呼ぶ場合、【囚魂】の一人のモヤが晴れ、それが霧須 音羽だったことが分かるが、それ以外の状況は変化しない。

PCが「霞 翔」の名前を呼ぶ場合、「戦闘前描写2」が発生する。

挿入描写2

黒いモヤが君たちを包み込む直前、君たちの頭の中にふと、思い出したように声が響く。それは、【閉鎖空域】に来る直前、三鷹 秋帆に言われた言葉だった。

秋「……きちんと、向き合ってあげて。相手が何を思っていようと、どんな風になっていようと、しっかり認識して、相手の名前を呼んであげて」
秋「『自分はあなたを見ている』と、そう伝えることは、とても大事なことだから」

PCが誰の名も呼ばない場合、そのまま戦闘に移行する。        

PCが「霧須 音羽」の名前を呼ぶ場合、【囚魂】の一人のモヤが晴れ、それが霧須 音羽だったことが分かるが、それ以外の状況は変化しない。

PCが「霞 翔」の名前を呼ぶ場合、「戦闘前描写2」が発生する。

戦闘前描写2

「霞 翔」と呼ばれた【鎖使い】は動揺した様子で手を止める

?「……!!や、やめろ!呼ぶな!呼ばないでくれ!僕は、僕は……!」

だんだんと、【鎖使い】や【囚魂】たちの顔の周りのモヤが晴れていく。その【鎖使い】は、紛れもなく霞 翔だった。
そして、その【囚魂】のひとりには、虚ろな目をした霧須 音羽の姿があった。
彼らは全員目に生気がなく、明らかに正気を失っている。
そして、そのモヤが晴れて行ったかと思うと、突然【閉鎖空域】の一部が揺らぎ、もともと天井であっただろう場所から【憑鎖】の欠片が落ちてきた。

霞「!!!やめて!!それに触らないで!!僕の、捨てなきゃいけない記憶を……!!!」

PCがその鎖の欠片を調べると宣言すると、「挿入描写3」が発生する。

挿入描写3 -霞 翔の記憶-

……僕は、どうしてこうなったんだろう。
ただ、情けなかった。
あの時あいつは、確かに僕に見えない何かが見えていた。
あの時僕は、ただ戸惑い怯えるだけの足手まといだった。
だから、同じ視点に立ちたかった。
……力に、なりたかったのに。

そんなことを望んで、いつしか僕から「鎖」が生えた。
……この「鎖」は、僕を僕じゃなくしていく。
僕を、あいつの「敵」にしていく。
そうして変わった僕は、支配してしまった人の居場所を奪って、ただただ隠れ続けている。

いつか誰かが、僕を「敵」として殺すのだろうか。
それはもういい、自業自得だ。
でも、もしその誰かがあいつ……【生者PC】だったら?僕を知る家族や他の友人だったら?
変わり果てた僕を見て、悲しむだろうか、怒るだろうか、失望するんだろうか。
そうなったら僕は、僕は……。

?「忘れ、ちゃえば?」

突然、頭の中に声がした。
顔を上げると、そこには【魂】がいた。「鎖」に繋がれた【死者】の【魂】が、僕に話しかけている。

?「ああ、ごめん、ねえ。久しぶりに、話、合いそう、だったから」

すると今度は、どこからか子どもが現れた。サングラスやマスクで顔を隠し、【死者】の【魂】を数えきれないほど「繋いだ」、まだ中学生くらいに見える小さな男の子。
そうか、話しかけてきているのは【魂】じゃない、この子だ。この子が、【魂】に代弁させているのだ。

?「忘れれば、いい。変わる前の自分、なんて。忘れさせればいい。その程度のこと、わざわざ、相手を【囚魂】にしなくたって、かんたん」 

……この子は、何を言っているのだろう。忘れさせるなんて、そんなの……。

?「そうすれば、変わったことを嫌だ、なんて、思わない、思われない」

……あ……。

?「望まなきゃ、よかった、自分のせいだ、なんて、ぜんぜん、まったく、思わなくなる」
?「忘れれば、楽になれる。忘れさせれば、自由になれる」
?「今からそれ全部、教えてあげる、それだけ『覚えさせて』あげる」
?「だから、ね、全部、全部、忘れちゃおう……き、ひ、ひ、ひ」

そして、そして僕は……。

(霞 翔の記憶に登場する【鎖使い】は、公式NPC「空元 繋太」です)

「戦闘前描写3」に移行する。

戦闘前描写3

自分の記憶を知られたことを悟った霞 翔は、表情を失い再度君たちに目を向ける。
すでに正気や自分自身の記憶をほぼ無くしており、ひたすらに人々の記憶も隠蔽するためだけに行動していたようだ。

霞「……消さなきゃ……知られたら、覚えられたら、消さなきゃ……」

そして、同じように【囚魂】たちも臨戦態勢をとる。
当然、その中の一人である霧須 音羽も同様で、一言も発さずただ構える。
かつて持っていた『自分を覚えてほしい』という欲も無くし、自身でさえ自分が誰なのかを忘れている様子だ。

霧「……消せば、楽になれる、楽にしてあげられる……」
霧「……忘れて。消えて。無くして。消して。いなくなって……」
霧「…………逃げ、て……」

そして、黒いモヤが再度君たちに襲い掛かる。
PCたちが演出を終えたら戦闘に入る。

【鎖使い:霞 翔】、【朧げの霊魂:霧須音羽】、【朧げの霊魂】との戦闘。

ボスデータ

鎖使い:霞 翔(正体が分かっていない場合、「モヤの鎖使い」と表記)
生死:生者 初期配置:12
【行動決定表】
1靄然霞消 ―アイゼンカショウ―※
生者のPCを下に1マス、死者のPCを上に1マス移動させる。その後2d6を振り、出た出目と同じ数字のマスを【特異点:淀み場】に変更する。
2 我捨生追 ―ガシャセイツイ―
生者のPCを下に4マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
3 我捨死追 ―ガシャシツイ―
死者のPCを上に4マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
4 背死囚喚 ―ハイシシュウカン―
モブデータB「朧げの霊魂」を13のマスに2体配置する。
5 濁流生纏 ―ダクリュウセイテン―
生者のPCがいるマスの1マス上のマスを【特異点:淀み場】に変更する。
6濁流死纏 ―ダクリュウシテン―
死者のPCがいるマスの1マス下のマスを【特異点:淀み場】に変更する。
(※霧然霞消 ―アイゼンカショウ―は鎖使い:霞 翔オリジナルの【縛鎖術】です)

モブデータA

朧げの霊魂:霧須 音羽 (正体が明らかになっていない場合、「朧げの霊魂改」と表記)
生死:死者 初期配置:9
【行動決定表】
1黒霧消 ―コクムショウ―※
PC全員は次の手番で、ボスを【結糸術】の対象に選べない。
2 道連降 ―ドウレンコウ―
生者のPCを下に2マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
3 道連昇 ―ドウレンショウ―
死者のPCを上に2マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
4 留縛怨 ―リュウバクエン―
自分が生者なら上に2マス、死者なら下に2マス移動する。
5 濁流陣 ―ダクリュウジン―
2d6を振り、出た出目と同じ数字のマスを【特異点:淀み場】に変更する。
6 行動なし
(※黒霧消 ―コクムショウ―は朧げの霊魂:霧須 音羽オリジナルの【縛鎖術】です)

モブデータB

朧げの霊魂
生死:死者 初期配置:11
【行動決定表】
1 道連降 ―ドウレンコウ―
生者のPCを下に2マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
2 道連昇 ―ドウレンショウ―
死者のPCを上に2マス移動させる。その後、自分が生者なら下に2マス、死者なら上に2マス移動する。
3 留縛怨 ―リュウバクエン―
自分が生者なら上に2マス、死者なら下に2マス移動する。
4 留鎖怨 ―リュウサエン―
ボスが生者なら上に1マス、死者なら下に1マス移動させる。
5 濁流陣 ―ダクリュウジン―
2d6を振り、出た出目と同じ数字のマスを【特異点:淀み場】に変更する。
6 行動なし

終幕パート

終幕パートでは、物語の結末や後日談を演出します。

描写1

PCたちが戦闘で勝利したことにより、霧須を含めた【囚魂】たちは次々に解放されていき、【閉鎖空域】も形を失っていく。(PCが【鎖使い】の正体を明らかにしないまま戦闘を行なった場合、ここで初めてその正体が霞 翔だったことが分かります。)
そして、霞 翔も正気を取り戻したようだ。(【憑鎖】が完全に消えきるまでの僅かな間ですが、今はまだ翔にも【死者】を知覚できます。)

霞「【生者PC】……僕、結局すごく迷惑かけちゃったんだね……」
霞「……それに、知らずに『鎖』を繋いじゃった人たちも……」
霞「僕、皆が僕のこと忘れれば、僕がどうなっても辛くならないって、そう思ったんだ……」
霞「……うん、本当、ごめん……」
霞「……それでも、おかげで助かったよ。本当に、ありがとう……」

そんな中、【魂】が【彼岸】へ向かおうとし消えかかっている霧須は、【死者PC】に話しかける。

霧「……悪かった」
霧「……【死者PC】が双魂になって、【彼岸】にしばらく一人でいて……オレ、不安になったんだ」
霧「誰にも覚えてもらえないまま、一人で永遠にここをさまようのかって……」
霧「……それで、いつの間にか不安が膨らんで、気付いたらこうなってた」
霧「……オレ、お前たちと戦って今更分かった気がするよ」
霧「本当は、オレのことを誰が覚えてようが覚えてなかろうが、あんま関係ないんだよな」
霧「……オレ自身が、ちゃんとオレを覚えてなくちゃいけなかったんだ」
霧「オレがしたこと、やらかしたこと。【彼岸】に還っても忘れない、ちゃんと覚えておくよ」
霧「……もちろん、お前たちのこともな」


場面を演出し終わったら、キリの良いところでメインプレイを終了し、アフタープレイへと移ってください。

アフタープレイ

アフタープレイでは、参加者全員でセッションを振り返り、終了するための処理を行ないます。詳しくは、こちらを参照してください。
アフレープレイを終えたらセッションは終了です。
お疲れさまでした!